Soup Stock Tokyo

永山祐子

Soup Friends Vol.66
永山祐子 さん

今月のスープフレンズは4/30(sat)に自由が丘にオープンする「also Soup Stock Tokyo」の設計・空間デザインを手掛けられた建築家の永山祐子さんです。女性建築家として国内外のプロジェクトで活躍される永山さんに、建築の道に進まれたきっかけや、日々の食のこと、建築家として重要な視点をうかがっていくと、構造物にとどまらないその先の視点、街と都市との大きな関係性を見据えていらっしゃいました。

──Soup Stock Tokyoをご利用いただいたことはありますか?

はい、ちょっと小腹が空いたときとか、地方へ行った時などにも重宝しています。特にオマール海老のビスクが好きです。

──スープにまつわる印象的な思い出があればぜひ教えてください。

昔、小さい頃にスイスに住んでいたとき、両親と車で旅行に出かけたことがありました。かなり夜遅くにどこかの森の中のレストランに到着して、そのときに食べたスープがどんな色や味だったかは思い出せないのですが、温かくて、ただただほっとしたことを覚えています。私にとって印象深いスープです。

──普段の食事において、心がけていることはありますか?

母の料理はいつも多品目で、私もそういう食材のバランスは見習いたいと思っています。母の味で思い浮かぶのは和食も多いのですが、スイスのときに習った料理をアレンジして作ってくれる料理。誕生日のような特別な日に登場したクレープです。テーブルの上でクレープを焼いて、家族でにぎやかに囲む食卓は子供ながらにワクワクしました。具材はミートソースや炒めた野菜など食事系のクレープが基本で、最後は果物と生クリームを入れてデザートに。懐かしい思い出の味です。

情報をインプットして建築に表現する「変換機」になりたい

──建築家を志したきっかけを教えてください。

父が生物物理の研究者だったので、高校3年くらいまでは生物の道に進みたいと考えていました。あるとき友達と進路について話していて「建築に行きたい」という子がいて。そこから影響を受けて建築に進路変更しました。思えば小さいときに家を建て替えたり、若くして亡くなった祖父が建築家を志していたこともあって、どこか影響を受けていたのかもしれません。

──表現のアイデアはどこから生まれてくるのでしょうか?

アイデアは自分自身の外側にあるものだと思っていて、自分の中に最初から「こういう建築をつくりたい」という強いイメージは敢えて持たないようにしています。頭の中を空っぽにして、情報をインプットし、それを自分の中で編集して状況をイメージしていく。その都度異なる条件を自分の中に取り入れて、建築に表現していく「変換機」になりたいと思っています。反対にマテリアルや現象のようなもののヒントは、いつも目を光らせながら歩いていますね。写真を撮るのもいいのですが、イメージで掴み取っておくことのほうが多いです。そのほうが自分の中で変換したときに良いアウトプットになる気がします。

都市における街と建築の関係性

──建築を考える上で、どういう風に「街」を捉えていますか?

プロジェクトごとにシチュエーションが違うのですが、建築と街の間にどういう関係性を結ぶかを考えています。先日完成したあるテナントビルは、ビルに入居する店舗と街との間に新しい関係性を作りだしたいと思って設計しました。街道沿いの景色を考えた時に、街を主体にした時には建物外壁は街のインテリアとも言えると気付きました。街って、降り立った瞬間に自分が共感できる街かどうかがすぐ判別できると思うんです。それってきっと感覚的なもの。互いの関係性を見極め、新しい関係性の結び方を提示して共感してくれると嬉しいし、つくづく建築の仕事って面白いなと思いますね。

──最近印象に残った建築はありますか?

先日ニューヨークを訪れた際、ハイライン(かつての高架貨物鉄道の線路跡地を再利用して作られた空中公園)がすごく良くて。インフラを場に変えることもユニークだし、歩きながら都市の断片的な構造が見えてきた。目線を少し高くするだけで、こんなにも違った視点で街を豊かに捉えられるんだと感じました。建築家に必要なスキルは、建築と都市、異なるスケールの対象を横断して捉えられることだと思っています。きめ細やかなミクロの視点から都市を捉えるマクロの視点まで、視点の幅をもっともっと拡げたい。かつて志したミクロの生物の世界も建築も、スケールは違っていても階層的に繋がっているんだなと感じています。

──ご自身にとって、お仕事に向き合うための原動力は何だと思われますか?

「知りたい」という好奇心です。これまでさまざまな分野の空間づくりに関わってきて、それぞれの分野の成り立ちを知ったり、ビジネスのことを深く知るきっかけをいただいて。建築に携わって段々と周りの世界が見えてきてやっと一人前になれたと思っています。好奇心が次の知りたいを生み出し、自分自身も突き動かされていく。それが原動力かもしれません。

永山祐子(ながやま ゆうこ)

1975年東京生まれ。昭和女子大学生活美学科卒業後、1998-2002年 青木淳建築計画事務所勤務。2002年永山祐子建築設計設立。主な仕事、「LOUIS VUITTON 京都大丸店」、「丘のある家」、「ANTEPRIMA」、「カヤバ珈琲」、「木屋旅館」「豊島横尾館」「渋谷西武AB館5F」など。ロレアル賞奨励賞、JCDデザイン賞奨励賞、AR Awards(UK)優秀賞、Architectural Record Design Vanguard 2012(USA)、JIA新人賞2014受賞など。

野菜と鶏肉のトマトシチュー

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