2018/12/15(sat)@東京・自由が丘

食からはじまる暮らしの見立て方
第四回「身体をいたわるおやつのこと」

おいしい教室「食からはじまる 暮らしの見立て方」とは?

「食からはじまる 暮らしの見立て方」も後半戦の第四回目、年内は最後の開催となりました。はじめまして、で始まったこの教室も回を重ねるごとに参加者さん同士の仲も深まってきています。

甘いものは別腹、とよく言います。師走のこの時期は疲れがたまることも多く、いつも以上に身体が甘いものを欲していたり、自分へのご褒美やクリスマスなどのイベントごとで甘いものを口にする方も多いのではないでしょうか。

近年、ココナッツオイルやチアシードをはじめとするスーパーフードが流行し、健康的な食生活に注目が集まっています。意識して野菜や、食物繊維をとる方も増えています。 みなさんは朝昼晩、3食だけでなく<おやつ>もこだわっていますか? 日本人の重大疾病の一つとしてがんになる方が増えていますが、その中でも40代以上の女性で大腸がんが増えているそうです。腸は臓器の中でも大きな部位で、腸内環境を整えることが身体全体の免疫を整えることにつながるといわれています。私たちが日々口にする おやつもリスクファクターの1つ。
朝昼晩の3食だけでなく、おやつにもこだわって暮らしに向き合っていきましょう。

今回は川上さんと一緒に<いいおやつ>とはなにかを考えていきました。

■ <いいおやつ>とは?

川上さんの考える、いいおやつの条件は、大きく分けて3つ。

1.油にこだわったおやつ

油には大きく分けて3種類あります。

植物性油脂(種子由来:ごま等、果実由来:オリーブ等)
種子は植物が芽吹くまでのエネルギーを蓄えているので種子由来のオイルはエネルギー源として優れています。果実由来のオイルは果実を紫外線から守るための抗酸化作用の高い成分を含んでいることが多く、実が熟してからの油はうまみや香りが豊かなことが特徴です。

動物性油脂 (バター、ギー等)
工程がシンプルで、旨味が強いことが特徴。近年原材料の高騰から、高価になってきている。

加工油脂 (ショートニング、マーガリン等)
腸や血管に良くないとされるトランス脂肪酸を含んでいることが多く、海外ではこのトランス脂肪酸の一日の摂取量を警告している国もあります。

量販店で販売しているおやつの成分表示を見てみると、マーガリンやショートニングを使っているものをよく見かけます。高価なバターなどに比べると安価で、加工もしやすいのが特徴です。その分、トランス脂肪酸が多いことを知らない方も多いのでは。
ひと言に「油脂(オイル/ファット)」と言っても、その成分や働きは様々です。できるだけ、身体に優しくて健康効果の期待できる「油脂」を使ったおやつを選びたいですね。

2.ミネラル・食物繊維が含まれているおやつ

日々の食事では不足してしまう栄養素をサプリメントで補うのも良いですが、おやつで摂取出来たら嬉しいもの。サプリメントを摂取すること自体は全く悪くないのですが、栄養素単体ではなかなか効率よく吸収できないものも多く、実は必要なサプリメントだけを飲めばいいわけではないのです。例えばコラーゲンの生成にはカルシウムやビタミンCが必要など、組み合わせが大切。栄養素を複合的に含んでいる自然の食材を使って、食事の中で組み合わせながら摂取できるのが一番です。

朝昼晩3度の食事でも不足しがちな食物繊維は、根菜類などに多く含まれている不溶性と大麦やワカメなどの海藻類に多く含まれるなどの水溶性の2種類に大別されます。
腸内環境を健やかに整えるためにはこの2つをバランスよく摂取するのが良いそうです。
川上さんのおすすめは茹でた大麦やサツマイモなどが入ったベトナムのぜんざい「チェ」。
スープストックトーキョーでもデザートとしてアレンジしたチェをお出ししています。

3.糖類にこだわったおやつ

糖類は量だけでなく、摂取する種類や取り方も大切です。最近「低GI」という言葉をよく耳にしますが、どんな意味かご存知ですか?
糖類の中でも、血糖値の上昇が比較的緩やかなものが低GIと分類されます。低GIに分類される糖類の特徴としては、精製されておらずミネラルを豊富に含むこと。ミネラルを豊富に含むことで、消化吸収が緩やかになり、急激な血糖値上昇を防ぐ効果があるといわれています。
高GIの代表の糖質は白砂糖。白砂糖はよくない、と言われる理由は、生成されることでミネラルが少なくなっているから。きび砂糖や黒糖、甜菜糖などのほうがミネラルを多く含んでいます。
対する低GIの糖質は、ココナッツシュガー、メープルシロップ、アガペシロップなど。
もちろん、低GIでも一気に砂糖だけを摂取したり、大量に取り入れるのはよくありません。
消化しきれない糖が蓄積されると、身体は糖化していきお肌のターンオーバーの妨げ、くすみの原因になったりしてしまうそうです。

難しいけれど、知っておきたい知識の連続にみんなで一生懸命メモをとりました。

■ おやつを作って味わいます。

これら<いいおやつ>の条件を踏まえながら、今回は3つのおやつを作って味わいました。

みんな、作り方に興味津々です。

● おやつ1:ローチョコレート

ココナッツオイルとカカオパウダー、砂糖を混ぜるだけでできるおやつ。まぜて、冷やして固まるまで15分ほどで出来上がります。
お好みでナッツを乗せると食感のアクセントと、ナッツのコクも出て満足感がでます。食べると本物のチョコのようなくちどけや味わいが広がりました。

● おやつ2:デーツスナック

デーツとはなつめやしのこと。中近東で良く食べられているドライフルーツで、果皮は片目でねっとりとした甘みが特徴です。
ミネラルや食物繊維が多く、イスラム圏では特にラマダン(断食)の時期に重要な栄養源として食べられているそうです。

デーツスナックはヘタと種を取って、そこに好きなナッツを入れるだけ。
簡単でおいしく、何個でも食べられそう…と声が上がります。

● おやつ3:ソイチョコムース

絹ごし豆腐とココナッツオイル、カカオパウダー、メープルシロップなどの砂糖を合わせるだけでチョコムースが出来上がります。

手順は3つと、とても簡単です。
① お豆腐の水気を軽く切り、ブレンダーで潰す
② ココナッツオイル、カカオパウダー、メープルシロップを加え混ぜる
③ 冷蔵庫で冷やし(10分ほど)、仕上げにソースを乗せれば完成。

お豆腐は軽く水を切って室温に戻しておくと、ココナッツオイルがかたくなってしまうのを防ぐことができます。
さっぱりとしていて、お豆腐のやさしさも感じられる味は、お好みでナッツやラズベリーなどのフルーツをトッピングしてもよさそう。
ゼラチンや生クリームも不要で、ボール1つでできるのでちょっとデザートが欲しいときにも簡単に作れそうと好評でした。

どのおやつもおいしくて、簡単で、そして食べていても罪悪感が少ないのが嬉しいところ。
作るのも手間がかからず、これなら続けられるかも、と手順や材料について質問の声が絶えませんでした。

■ 身体をいたわるおやつは、軽やかな向き合い方から。

ワークショップを通じて、「身体をいたわるおやつって何だろう」について、とてもたくさん考えることができました。

川上さんの言葉で印象的だったのは、
「必ずしもいいおやつしか食べてはいけない、ということではない」ということ。
「いいおやつとは何かを知り、知識として持っていること。日頃食べる食事の中で意識できるようになることが大切です。変に我慢したり、こだわりすぎたりするとかえってストレスになることもありますよね。すべてを一気にやめるのではなく、ちょっと気にしてみる。たまには身体をいたわるおやつにしてみる。そのくらいでいいと思います。」

とかくストイックに考えがちなおやつのことも軽やかに前向きなものに変えてくれる川上さんの言葉こそ、一番の見立てのコツだと感じました。

楽しく、おいしいものを、気の置けない友人や家族とたわいのない話をしながら食べること。
その時間が何より満足感をもたらしてくれます。今回も参加者の皆さんと楽しい時間を過ごすことができました。

おいしい教室「食からはじまる 暮らしの見立て方」もあっという間にあと2回。
次回は「和と洋のスープについて」です。どうぞお楽しみに。


ゲストプロフィール:川上ミホさん

料理家、フードディレクター、ソムリエ。
国内外のレストランでの調理経験を経て独立。食のスペシャリストとして書籍・雑誌、企業webなどメディアを中心に活動。
イタリアンと和食をベースにしたシンプルでストーリーのあるレシピと感度の良いスタイリングに定評がある。
2014年、目黒区東山にプライベートレストラン「quinto」をオープン。
Louis Vuitton city guide TOKYO版掲載など注目を集めると共に、同名で食を中心としたライフスタイルブランドをスタートしている。
http://www.miho-yokozuka.com/


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