2019/1/16(sat)@東京・自由が丘

食からはじまる暮らしの見立て方
第五回「和と洋のスープについて」

おいしい教室「食からはじまる 暮らしの見立て方」とは?

年末年始のごちそうを味わった体を労わりたい。そんなときこそ、あたたかい汁物がおすすめです。いろいろな出汁を知り、味わうことで、味覚は研ぎ澄まされるのです。 今回は、心も体も和ませる、やさしい汁物について学びました。

「おいしい教室 〜食からはじまる 暮らしの見立て方〜」
第五回目は、和と洋のスープについて。です。

■ 世界最古のスープを味わう

古代ローマ時代、食べることがとても好きな富豪が沢山の食材を煮込んで作ったスープ。これが「世界最古のスープ」と言われています。実際どんな味がするのか気になります。川上さんが、当時のレシピを再現してくださいました。
にんにく、オリーブオイル、唐辛子、青魚、ガルムなど、香辛料も使って煮込まれたスープ。それは、すこし辛味があって、塩は使っていないのに、しっかり塩気もある。素材の出汁が出ていて、このスープで手軽に栄養をとれることが分かります。
昔から、具材を煮て食べるという、素材をおいしくするための工夫がしっかりとされていたんだなと感じました。

それにしても、世界最古のスープが思いのほかのおいしさで感動してしまいました。

■ 煮出すだけで、おいしいを感じられる。それがスープ。

出汁といっても、さまざまな出汁がありますね。魚介出汁や動物出汁、野菜出汁など。
日本料理の主流の魚介にも、かつお、さば、いりこ、昆布など種類は様々。また、「昆布」といっても地域によって種類も違ってきます。
例えば、京都はいしり昆布、江戸は日高昆布。もちろん味もそれぞれの良さがあります。いしり昆布は、澄んでいて上品な味わいに対し、日高昆布は手軽でバランスもよく、様々な料理に使いやすい。
素材の違いによって、地域の料理の個性を感じられるのも、面白いですね。

それぞれ、出汁の取り方を詳しく教わりました。素材によって、火加減や、時間もそれぞれ異なり、すこしの手間暇をかけるだけで、こんなにもおいしい出汁が取れることを、改めて知りました。
また、それぞれの出汁の知恵も教わりました。

例えば野菜出汁。出汁を取るために野菜をたくさん買い込む、のではなく、普段の料理で捨ててしまうようなにんじんのへたや皮、玉ねぎのあたま、しいたけの軸、ブロッコリーの茎など、冷凍しながらため置いて、それらも全部だしを取るときに使うのです。
そうすることで、深い味わいになるだけではなく、栄養もたっぷりといただけます。
これは、ほかの出汁でも同じこと。えびの殻や尻尾をオリーブオイルでカリカリに炒めて砕いて出汁に使えば、濃厚で香ばしい出汁がとれ、トマトと合わせるとそれだけで絶品スープに。
肉系は、部位によって旨みが変わっていきます。豚は、肩ロースを使うと旨みと脂肪のバランスがよく、お肉としてもおいしく食べられたり、ももを2~3時間コトコト煮込むと、繊細で澄んだ出汁になるそうです。
普段使わないものを使ったり、部位によってこだわるだけでも、味が変わるのは、スープを作る工程だからこその愉しみ方ですね。

■ わたしのすきなポタージュ、味噌玉をつくる

実際に、どんな味が自分の好みなのか。すきな組み合わせをそれぞれ探しました。かぼちゃのポタージュでは、かぼちゃペーストをベースに、鰹昆布出汁、ミルク、たまねぎ、人参など、少しずつ加えたものを味見しながら自分の味覚の「すき」を探しました。

同じかぼちゃのポタージュでも、具材を加えたり、引いたりするだけでこんなにも風味や舌触りが変わることに、驚き、皆さん愉しみながら、わたしのすきを探していました。

次に、味噌玉では、自分のすきな具材を選んで、可愛らしい味噌玉を作っていきました。
具材は、水分のないものがおすすめなので、豆腐をいれたいときには高野豆腐などを選ぶのがおすすめ。また、ゆずをいれると香りが広がり、それだけで一気に本格的になったり、梅干しも良いといいます。

完成した味噌玉に、お湯を注ぐと、ふわ~と味噌が溶けていき、香りが広がり、その様子をみるだけでも愉しく、食べる前から心躍ります。

今回は、白い炊き立てごはんと一緒に、それぞれのすきを詰めたお味噌汁をいただきました。

日頃から馴染みのあるお味噌汁も、こうやって丁寧に素材や出汁を選んでいただくと、とても心が穏やかになり、時間もゆったりと流れるように気持ちになりました。

最近は、様々な料理を食卓に並べて味わうのも人気ですが、「一汁一菜」というように、あたたかいご飯と、やさしい汁物、ちょっとした漬物を一つ。
それだけでも、丁寧に味わっていただけば、心もお腹も満たされ、不思議と幸福感で満たされます。
毎日食べるものだからこそ、簡単でなおかつ体も喜ぶものを。
皆さんも、いつものお味噌汁を少しこだわってみたり、すきを選んでみませんか。
きっと、心が落ち着いてゆったりと時間を過ごせるはずです。試してみてくださいね。

次回「食からはじまる暮らしの見立て方」のテーマはいよいよ最終回。「いろいろな香の物、漬物をつける」です。どうぞお楽しみに。


ゲストプロフィール:川上ミホさん

料理家、フードディレクター、ソムリエ。
国内外のレストランでの調理経験を経て独立。食のスペシャリストとして書籍・雑誌、企業webなどメディアを中心に活動。
イタリアンと和食をベースにしたシンプルでストーリーのあるレシピと感度の良いスタイリングに定評がある。
2014年、目黒区東山にプライベートレストラン「quinto」をオープン。
Louis Vuitton city guide TOKYO版掲載など注目を集めると共に、同名で食を中心としたライフスタイルブランドをスタートしている。
http://www.miho-yokozuka.com/


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