Soup Friends
Soup Friends Vol.58 / Kaori’WS さん
フランスやドイツをはじめとするヨーロッパ、日本、アジアなど世界を舞台に、広告やコレクションなどさまざまなファッションの現場でキャリアを重ねてこられたメイクアップアーチストのカオリさん。一昨年に拠点を日本に移した現在も、ヘアメイクの仕事にとどまらず幅広い領域で活躍するカオリさんに、ヘアメイクの道に進まれたきっかけやご自身のクリエーションの源、海外で多様な価値観に触れてきたからこそ見えてくる日本の女性の美しさについてお話を伺いました。
──スープはお好きですか?
はい、好きです。昔ドイツに住んでいたころに印象に残っているのはレンズ豆のスープです。レンズ豆は前もって水に浸さなくてもすぐに使えるので、便利でよく料理していました。主な材料はレンズ豆と豆乳、塩と胡椒。余計なものは極力足さないごくシンプルなスープです。
──普段お料理はなさいますか?
自宅でもよく作ります。普段夜は、基本的におかず中心で前菜をいくつかとメイン料理を一品ずつテーブルに出して食べるスタイルで食事します。サラダは旬の野菜を摂ることを意識して、キヌア、豆類などその時々によってさまざまにアレンジします。手早く手際よく、いくつかの料理を同時進行で作るのは得意ですね。
──ヘアメイクの道を志したきっかけを教えてください。
この世界に進もうと決めたのは3~4歳のころです。当時母親に連れられて行った美容室で出会った、美容師さんの働く姿がとてもきらきらしていて。その時に「あっち側に立ちたい!」と思ったのがきっかけです。
──そんな小さな頃から決意されていたのですね。
その当時から雑誌のモデルさんの顔にお絵かきでメイクしたり、友だちの髪をアレンジしたりしていました。髪の長い三つ編みの友だちがいたのですが、彼女の三つ編みをじっと見つめては、家に帰り人形の髪の毛で練習をしていました。そうやって独学で習得していく、研究熱心な子どもでしたね。
──どのようなきっかけでパリへ行かれたのですか。
小学生の頃から「いつかはパリに行く」と決めていて、美容学校を卒業後はサロンで働きながら並行してメイクの学校にも通い勉強する毎日でした。今思うとハードなスケジュールでしたが、自分にとってはやりたいことでしたから苦にはならなかったです。渡仏したのは23歳の時です。現地に知り合いもいなくて「これからどこへ行こう?」とガイドブック『地球の歩き方』を初めて開いたのは、パリへ向かう飛行機の中でした。何よりもやりたいことが原動力の根底にあり、その想いに突き動かされていましたから不安はありませんでしたね。
──パリでのお仕事について教えてください。
パリでは出会いにも恵まれ、さまざまなファッションの現場でヘアメイクの経験を積みました。ファッションショーでメイクのチーフを任されることがかねてからの夢でしたが、その夢が叶ったのは27歳の頃です。一つのショーを迎えるまでデザイナーとショーのチームで何度もテストを繰り返します。私がメイクで表現したいものとデザイナーが求めるもの、それぞれの価値観の狭間で自分自身の考えをどう相手に伝えるか。表現の意図を説明する力が身に付き、少しずつ自信がついていきました。
──ご自身の表現はどこから生まれるのでしょうか?
表現する上で大きく影響を受けているのは、子どもの頃から目にしていたモネの“睡蓮”などの印象派絵画や、ミレーの“落ち穂拾い”などのヨーロッパ絵画です。私の場合、クリエーションをするときまず自分が感じることを言葉に表します。湧き出す言葉を思いつく限り書き出し、分類してイメージを掘り下げる。そうすると最終的にはひとつの核となる言葉が見えてくるんです。その言葉を「印象派だったらどう表現するだろう?」と色彩の想像を膨らませていきます。色にもそれぞれ連想されるイメージやメッセージがあるように、言葉を文字ではなくイメージとして感覚的に認識しているからかもしれませんね。
──いま一番興味があることはどのようなものでしょうか。
華やかなヘアメイクの世界で自分の感覚を表現することはもちろん、最近は、ライフスタイルに役立つ身近なものを作ることにも興味を持っています。それから日本に帰ってきてから感じたのは、日本の女性がメイクの色を重ねすぎていることです。メーキャップの観点から言えば一番大切なポイントは影と光です。自分の持っている美しさを活かすメイクを意識してほしいなと思い、機会があればセミナーやワークショップの場で伝えるようにしています。
──自分の持つ美しさに気づくにはどうしたらいいでしょうか。
まずは自分自身を理解すること。鏡で自分を客観的に見るとか、普段何気なく発している言葉を意識することもいいかもしれません。そして自分の内なる声を聞き、そのことに正直になること。きっかけは小さなものかもしれませんが、しっかりと耳を傾けて自信を持ってほしいと思います。自分の人生は自ら選び取っていくものですから。