Soup Friends
Soup Friends Vol.16 / 細川亜衣さん
──細川亜衣さん(以下、細川さん)が料理の道を志されるようになったのはなぜですか?
食べるものをつくってみようという発想に至ったのは、お菓子づくりが好きな親友がしょっちゅう大人顔負けのケーキを焼いてくれていたのですが、段々と一緒に料理もするようになり、魚のパイ包みや、ラヴィオリなど、本格的なものにも挑戦して料理の楽しさに目覚めました。
また、母方の女性たちがみな料理好きで、家族のために何でも心をこめてつくっていたことも影響があるかもしれません。
──細川さんがイタリア料理をベースに活動をされるようになったきっかけを教えてください。
イタリアに住んでいたのは3年ほどですが、北から南まで様々な土地を訪れました。
シチリアでは、料理教室の門を叩きましたが、先生に紹介された滞在先のお母さんがとても料理熱心で、料理への好奇心にあふれた私を温かく迎えてくださったので、いつの間にかその方が私の“先生”になっていました。
彼女は、朝4時に起きて朝食、昼食の支度をすませ、私が起きる頃には掃除や編み物までしていました。コトコトと煮えている鍋や、すでに出来上がった料理を見つけて悔しい思いで“どうやって作ったの?作るところ見たかったのに…”と聞くのが常でしたが、どんな小さな質問にも快く答えてくれました。買い物やご近所との立ち話まで、金魚のふんのようにくっついては本当に様々なことを教えてもらいました。どれも暮らしの中の小さな積み重ねでしたが、毎日が喜びに満ちていました。シチリアの鮮やかな色や光とともに、あの頃の日々は今でも私の中で輝いています。
──イタリアでは、すでに料理の道を志そうと決めていらしたのですか?
──素材そのものの味を、オイルと塩で引き出す“シンプルなひと皿”が特徴的な細川さんのスタイルは、どのようにできあがったのでしょうか?
素材を一番おいしいと思う状態にするために、本当に必要な手間は何なのかを考えているうちに、次第に自分の料理というものが出来上がってきたのだと思います。
──「食べること」において、大切にしていることがあれば教えてください。
また、家の裏庭では、筍もたくさん採れて、クリームのような素晴らしい香りがします。たくさん採れるから、また、今までに味わったことのない風味の筍だからこそ、冒険ができて、既成概念にとらわれない料理が生まれることも多い。“ひとつの食材がもつ可能性を信じる”ことこそ、私が料理をする中で一番大切に思っていることです。