Soup Friends
Curry Friends 特別編 /小林真樹さん
大学生になり、バックパッカーでインドに行ったら、完全に魅了されてしまいました。何度も行くうちに、もっと長期滞在したい、そして現地の人とコミュニケーションがとれるようになりたいと思い、留学して語学学校に通いながら、2年ほど暮らして。留学といいつつ、インド各地を旅してばかりいたんですけどね(笑)。
バックパッカーの時は、こだわりもなく安い食堂で食べていたので、それほどインド料理に感動したことはなくて。でも、あるお家に招かれて、ダールとチャパティをご馳走になったんです。正直、これまでさんざん食堂で食べてきたものなので、「ああ、またこれか…」と思っていたのですが(笑)、食べてみたらこれまでとは別物の料理のようにおいしかった。決して裕福な家庭ではなかったし、使っている豆やスパイスも大差はないと思うんです。だから、家庭料理がこんなにもおいしいものなのかと感動して、そこからインドのことをもっともっと知りたくなってしまった(笑)。
なぜ外国人の自分が、民家に招いてもらえたのか…ときっと思われますよね(笑)。僕が外国人だから興味を持ってもらえたのかもしれませんが、インドの人は、人同士の距離が近いなと感じます。こちらから積極的に話しかけると、ちゃんと答えてくれる。あとは、行く前に下調べをして、聞きたいことを用意していくので、それをもって話しかけると、そこから発展して家に招き入れてもらうこともあります。常に情報を収集して、持って行く。僕の場合は興味がありすぎて聞かずにはいられないだけですが(笑)、そういう相手への興味や情熱は、家のドアを開けてもらうことにつながっているのかな。
当初は、“インド雑貨”という広いジャンルを扱っていたのですが、僕はインド人の日常生活に興味があったし、そこで使われている民具がおもしろいと思っていて。観光客向けのお店で売っているものには興味がなかった。観光地よりも、民家の中にあるものが知りたい。加えて、インドの食文化やカレーも好きだったので、その周りにある実用的なものを扱いたかったんです。
始めたばかりの頃は、日本で現地人が営むお店は多くなくて。ここ数年でインド料理店もネパール料理店もすごく増えましたね。お店同士のコミュニティの中で「こういう日本の業者があるぞ」と口コミで広げてもらいました。今も現地の言葉で電話注文が入ります(笑)。同じようなジャンルの個人業者も未だにいないですし、すごくニッチな層に向けていると思うのですが、それでも続けてこれているのは、確実に欲しいと思ってもらえる人がいるからだと感じています。
インドは広大で人口も多いので、宗教や言語などの文化や、自然環境も様々です。地方によって、食材や調理法も変わるので、それぞれ味は違いますね。北部でも細分化すると、北の中でも北西と北北が…と、確実に違いがある。海沿いの地域は魚介を使うし、砂漠の地域ではそこでしか生産できない野菜を使ったり。山岳地域は、ひえやあわを主食にしていたり。各地域によって、食材、調理法、食べ方が違うので、そういう現地の情報をもとに旅先のルートを決めていくと、無限にあってとても時間が足りない(笑)。20年以上通っている今も、行くたびに体験が上書きされます。どこへ行っても特色があって、本当におもしろい国だなと思いますね。