Soup Friends

Soup Friends Vol.10 / 柴門ふみさん

『東京ラブストーリー』や『あすなろ白書』など、恋愛をテーマにした数々の作品を通じてアラサー/アラフォー世代の女性たちに絶大な支持を得ている漫画家の柴門ふみさん。骨董や仏像などへの造詣も深く、何事にも強い好奇心でとことん突き詰める柴門さんの「食」へのこだわり、「大好きなスープ」にまつわるお話をうかがいました

──柴門さんがSoup Stock Tokyoがお好きという情報をとあるルートから入手したのですが、どちらの店舗をよく利用されているのでしょうか?

表参道に行きつけの美容院があって、たいてい中途半端な時間に終わるので、小腹が空いた時によく表参道のお店(Echika表参道店)を利用するんです。あそこは本当に便利ですよね。地下に潜ってすぐの駅ナカにあって。 私の場合、美容院にはいつも12時くらいに入るので、終わるのが3時とか4時くらい。お昼を食べそびれたままなので、非常に中途半端にお腹が空いているんですよね。時間的にはがっつり食べるわけにはいかないし、かと言って晩ご飯にはちょっと早いし。そういう時に丁度良いので必ず立ち寄っています。

──お好きなメニューは何でしょうか?

東京ボルシチと、豚トロのトマトストロガノフ、オマール海老のビスクはよく選びますね。あとはその時々に応じて、トマト系や野菜がたっぷり入っているメニューを選びます。実は残念ながらカレーはまだ食べたことがないのですが、たいていはスープ2種類のセット(SSセット)をご飯と組み合わせて食べています。ちなみにあのご飯、ほんのり味がついていて美味しいですよね。

──そうなんです。ご飯はスープに合うようにと、いろいろ試行錯誤の上に辿り着いた味なのですが、特に女性には人気で。腹持ちもいいんですよね。ちなみに、お好きなスープ(SSセット)の組み合せは何でしょうか?

寒い時は、東京ボルシチをよく頼みます。ボルシチと一緒に組み合わせるのはトマト風味のスープが多いですね。寒い時期にあのボルシチは外せないです。なので、まず定番にボルシチがあって、あとはトマト系とか、野菜がたっぷり入っている体に良さそうなスープを組み合わせたりして…。ボルシチが結構しっかりとした濃厚な風味なので、一緒に頼むのはサンゲタンとか生姜入りのさっぱりとしたスープを合わせることも多いです。結構、鉄板メニュー同士の組み合せばっかりですよね。私って思い切り一般的な人間なんです(笑)

──“食事”をする際のこだわりは何でしょうか?

野菜はとにかくたくさん採るように心がけています。それと、冷え性なので、汁物は必ず採るようにしています。温かいものを飲むと、体が芯から温まりますから。和食の時は必ず味噌汁かお澄まし。洋食の時はそれこそスープをつけます。だから元々スープは普段の食事に欠かさないメニューでもあるんです。

──スープに関する想い出や、スープという料理に対する特別な想いがあればお聞かせください。

子供たちが小さい頃、離乳食によく野菜のミネストローネを作った想い出があります。野菜を刻んで、キャベツとトマトさえ入れればミネストローネなんですよね。とにかく簡単だし、一度に何種類も野菜が採れるので。具が小さく刻んであるから小さな子供でも食べられますし。大人はチーズとか、他の具材もプラスするなど、最初は一緒のお鍋で作ってから大人用と子供用に分けてそれぞれ最後の味付けをするなどの工夫をすれば、家族全員で一緒に食べられるというとても便利なメニューなんですよね。

──軽井沢「星のや」で、「森林養生プラン」という生活習慣改善プログラムを体験をされるなど、いろいろと食生活にも気を配られているとうかがいましたが。

その「森林養生プラン」は、玄米中心の食事を毎回30分以上かけて食べるというものなんですが。そのプランを体験して以来毎日、朝は梅干しと生姜におしょうゆをかけて、そこに番茶を注いで作る「梅しょうゆ番茶」というのをいただいてから1時間くらい散歩するというのを続けて。 お昼も夜もご飯は玄米食。ご飯茶碗一杯くらいのご飯に、野菜3品くらいのおかずを30分くらいかけて食べるのですが、それを1月から初めて4kg痩せたんです。以降、リバウンドも無いですし、辛いダイエットをしているという感覚もないんです。玄米を100回くらい噛んでいると、口の中でお粥みたいなスープ状になるんです。それをゆっくり胃に入れながら食べていると、食べ終わる頃にはすっかり満腹になっているので、少量でもかなり満足できるんですね。それに慣れると逆に玄米じゃないと物足りなくなる。とにかくゆっくり食べるようになりました。

──今さら愚問になりますが、お料理はよくなさるのでしょうか?お得意料理は何でしょうか?

そうですね。子供のご飯はずっと作っていたので。 最近は茄子を使った料理をよく作りますね。素揚げすると美味しいですけれど、それだと油を摂り過ぎてしまうので、表面だけ油でさっと炒めて、後は蓋をして蒸し焼きにして、じっくり時間をかけて調理すると素揚げに近い食感になるんです。 それに、夏は特に生姜やにんにくを入れて、挽肉と一緒に炒めて豆板醤とお醤油とお酒でさっと味付けしてピリ辛風味に仕上げて食べたり。…そのバリエーションでエリンギやピーマンを入れたりして。その日の気分で色々な野菜でアレンジが利くので、茄子と挽肉は必ず常備していますね。

──お得意の料理があれば教えていただけますか?

日々の食材を買い物できる先が近所に無いので、一度にまとめ買いをして、後は毎日冷蔵庫の中に有るもので何を作るか考えるというパターン。 結構有りものでアレンジして料理することが多いですね。挽肉とか、豚肉のしゃぶしゃぶ用、鶏肉のささ身なんかは酒蒸しにして小分けにして冷凍しておいて。何かと困った時に活用しています。

──ご自宅に人を招かれることは多いのですか?

それが“ちょっと意外“と思われるみたいなんですけれど、人を家に招いて食事をすることってほとんど無いですね。料理は、基本的には家族のためにしています。

──ご家族とお食事されるのと、おひとりでお食事されるのはどのくらいの比率ですか?

今年の5月に息子が独立したので、最近はひとりで食べることも多くなりましたね。だから近頃では心おきなく玄米を炊いてダイエットに勤しんでいます(笑) ひとりで食事をすることが多くなってから最近凝っているのが、新玉ねぎのサラダ。スライスするだけで、あまり水にさらさなくても辛味がそこまで強くないから生でもいけるんです。それこそ、常備している豚肉を茹でて冷やしゃぶにして上にのせたりして。胡麻だったり柚子だったり好きなドレッシングをかけて食べると、玉ねぎ1玉分も楽に食べれてしまう。 玉ねぎは血液をさらさらにする効果とか、体内のエネルギーを燃焼させるカプサイシンが豊富なのでダイエットにもおすすめです。なんて、ちょっとお話逸れてしまいましたね(笑)

──いえいえ、実は玉ねぎはSoup Stock Tokyoのスープやカレーにおいても欠かせない存在なんです。手前味噌になってしまうのですが、普通ご家庭ではなかなかそこまで手をかけられないくらいの時間をかけて丁寧に炒めたオニオンソテーがいろいろなスープやカレーの味の決め手になっていて、それこそ、柴門さんがお好きな東京ボルシチにもしっかりそのオニオンソテーが入っています。

そうなんですね。確かにあのオニオンソテーを作るのが苦手なんです。せっかちなんで、根気よく炒めるあの作業がどうも苦手で(笑)

──お砂糖などの余計な調味料を使わずに、野菜や食材そのものの甘みで風味を決めるので、とにかく食材そのものの味をとことん引き出すまで「いかなる作業においても、手間と時間をかけて作る」というのが基本になっているんです。話は飛びますが、柴門さんはお仕事を通じて旅されることも多いと思うのですが、実際にご自身で何か新しいものを求めて旅されるとしたら、どちらに行きたいですか?

今はふたつあって、ひとつは壮大な自然の景観に出会える場所。もうひとつは、古い美術品がある場所ですね。どちらも「今まで見たことがない凄いものが見たい!」というのが共通の理由なんですけれど。世界遺産を観て歩くというのが余生の夢なんですけれど、体力が続く限り(笑)自然が創造したとんでもない景観に惹かれます。それこそ、マチュピチュとかはその両方の目的を満たしてくれるので、ぜひ訪れてみたいですね。

──最近はよく仏像巡りをなさっているとうかがいましたが。

以前、『文芸春秋』さんとの企画で仏像巡りをする機会があって、それから古いものにものすごく興味を持つようになったんです。たまたま観たのが京都の国立博物館にある巨大な閻魔像なんですけれど、とにかく素晴らしくて。 漫画をずっと描きつづけてずっと平面の世界で生きてきたので、「なんか立体って凄いな!」というインパクトがあったんですね。その後、東京に戻ってたまたま東京の国立博物館に、運慶が彫った「無著像、世親像」という仏像が特別展示されたんですが、それが素晴らしい芸術作品で、「ああ、これも仏像なんだ!」と。 これからは仏像をちゃんと観ようというふうに思って。それが30代半ば頃のことですから、ずいぶん前のことですけれど。以降、機会がある度に奈良・京都で仏像巡りをしているんですが、とにかく面白くて。

──そういう仏像を観られて、ご自身の作品になにか投影されることってあるのでしょうか?

無いんですよ~それが!これは完全に趣味ですね(笑)まあ、それはそれで、仏像のエッセイなどのお仕事には繋がっているんですけれど、漫画にはほとんど繋がってないですね。 ただ、仏像を巡りながらその周辺の資料を読み込むと、仏教説話とか結構面白いんですよ。人を惹き付けるインパクトの強さとかはものすごく感じますね。 たとえば『安珍・清姫』なんかは現代にも通じるようなお話だったりしますし。人の心を打つような物語は周辺にふと転がっていたりするので、そういうのは見つけたら拾ってきますけれどね。

──冒頭でうかがったお話に戻るのですが、そもそも柴門さんがSoup Stock Tokyoをご利用される理由は、どんなところにあるのでしょうか?

まず汁物が好きっていうのが最大の理由ではあるんですが…。スープはやっぱり体に優しい食べ物として私の中で位置づけられているんですよ。小腹が空いたからといって、ハンバーガーとか牛丼とかを食べようという気分にはならないのに、スープだったらたとえどんな体調でも胃が受け入れられるんです。 あとは、“注文するとすぐに出てくる”というのも大きいかな(笑)やっぱりお店に気軽に入れて食べたいものが待たずにすぐ出てくるというのは大きいですよ。何かの用事の合間にサクッと小腹を満たしたい時なんかは特に嬉しいですよね。 あと、ひとりでも入り易い雰囲気も好きです。美容院の後とか、デパート巡りの後とかひとりで慌ただしく動いている時に、思いついてサッと入れる感覚が良いですよね。だから、松屋銀座の地下にあったお店が無くなってしまったのは大きな痛手です(笑)

──未来の「Soup Stock Tokyo」に望むこと、リクエストなどがあればお聞かせください。

サラダとかのサイドメニューが欲しいです。 スープをいただきながら、スープの箸休めになるようなちょっとさっぱりした生野菜が食べたいと感じることが多いので。たとえばですが、和食の懐石料理って絞めにご飯とお漬け物と汁物が出てきますよね。そのお漬け物みたいに、何かが欲しいんですよね。「最後はさっぱり絞めたい」みたいな。 だから欲を言えばシャキシャキした水菜のサラダみたいに、青菜系の食感の良いサラダがいいですね(笑)

──最後に、このWEBサイトをご覧になっている皆さんにひとことメッセージをいただけるでしょうか?

いろいろ旅をしていても常に感じることなのですが、世界中どこを探しても、こんなに美味しいものが溢れている国って日本以外に無いと思うんですね。 だから、そういう環境のなかで1食1食を本当に美味しいと感じて食べられたら、それ以上の幸せは無いと思うんです。 そもそも、基本的には1日3回しかチャンスは無いわけだし、人間ってやっぱりお腹が空いてないと本当の美味しさを心から堪能することはできないと思うんですね。 そう考えてみると、本当に美味しく食事を味わえるのって無限ではない、かなり有限なのですよ。だからその大事なチャンスのなかで1回でもまずい食事をしたら、ものすごく損をした気分になるわけなんです。 だから、1食1食をとにかく大切にしたいですね。というのが、私自身の切実な想いです(笑)

柴門ふみ/さいもんふみ

漫画家、エッセイスト。徳島県徳島市出身。お茶の水女子大哲学科卒業後、1979年に『クモ男、フンばる!』で漫画家デビュー。83年に『P.S.元気です、俊平』で講談社漫画賞、92年に『家族の食卓』『あすなろ白書』で小学館漫画賞を受賞。91年にドラマ化された『東京ラブストーリー』ではリアルな女性像を描き、女性たちから絶大な支持を得る。作品に『女ともだち』『華和家の四姉妹』『はんなり!』、エッセイに『恋愛論』『愛についての個人的意見』『フーミンのお母さんを楽しむ本』『サイモン印』『恋する文豪』などがある。

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