Soup Friends

Soup Friends Vol.36 / 小雪さん

代表作と呼ばれる作品群に恵まれ、世界を舞台に活躍を続ける女優・小雪さん。昨年長男を出産し、今年に入って第2子となる長女を韓国で出産。映画やテレビ、雑誌などで拝見する華やかなバイオグラフィーの根底には、信念をぶらさず、冷静に、真摯に目の前の事柄に取り組む姿勢がありました。女優、妻、母のどれかだけでなく、どれをも持ち合わせたひとりの女性として生きる小雪さんにお話を伺いました。

──Soup Stock Tokyo(以下、SST)をご利用いただいたことはありますか?また、お好きなスープがあれば教えてください。

スタジオで撮影する時に、お弁当と一緒にSSTのスープをよく頼みます。わたしの定番は「東京参鶏湯」「オマール海老のビスク」「とうもろこしとさつま芋のスープ」「久米島産もずくとオクラのスープ」「北海道産かぼちゃのスープ」あたりでしょうか。「黒豆納豆チゲ」も韓国風で美味しそうですね。近所の駅にも欲しいです(笑)

──スープ(汁物)にまつわる思い出があれば、ぜひ教えてください。

日本だけでなくアジア諸国全般的に言える食文化として共通するものだと思うのですが、汁物は食事をする時に必ず飲みたいものですよね。特に海外に旅行に行ったりすると、フライトから降りた時に汁物を食べたくなって、スープがみつからない時も、スープに近い料理を探して食べたりします。日本人が求める熱さ(温度)でスープを飲める国は、海外にもなかなかないでしょう?日本国内でも外で食事をしなくてはならない時には必ず「スープは何がありますか?」と聞きます。どこにいても胃袋を温めたいという衝動にかられるし、スープを飲むだけでほっとしますよね。

──スープ(汁物)がお好きということでしたが、ご自身でお作りになるスープがあれば教えてください。

自宅でも汁物は必ず作ります。味噌汁や野菜スープ、参鶏湯などが一番多いレパートリーですが、味噌汁の具材ではなめこと豆腐が一番好きです。いろいろな種類のきのこを買ってきて少し干して味を濃くしてから作るきのこスープも気に入っています。こどもには、さつま芋や長芋、かぼちゃなどをミキサーにかけて潰して、豆乳と出汁でのばしてポタージュみたいにしてあげることが多いです。出汁は日によって違いますが、さつま芋やじゃが芋は洋風出汁のほうが合うと思います。こどもは正直ですから、美味しいものはよく食べる(笑)。また急いで食べなくてはならない時に、素材の形がゴロゴロと残っているものは時として食べづらいこともあるので、こども用のものと同じようにポタージュにしておくと大人もさらりと食べられて重宝します。
韓国チゲも作りますが、なかでも「チョンゴクチャン(納豆チゲ)」をよく作ります。韓国の納豆は日本のものと比べてもう少し発酵が進んでいて、豆の味が濃いのが特徴です。韓国ではチョンゴクチャン用の納豆なども売っています。もちろん日本の納豆でも作ることができますが、少しさらっとした仕上がりになりますね。
最近はとりわけ、わかめスープを飲むようにしています。おっぱいもよく出るし、甘くて美味しいみたいで、長男の時より長女のほうが母乳を好んでよく飲みます。試しに自分でも飲んでみたのですが、さらさらとしたコンデンスミルクみたいでした。昔は日本も海藻をよく摂っていたと思うのですが、韓国は海藻の消費量がとても多い国なので、現代の日本人や特に女性にとっては、見直されるべき食材のひとつだと思います。韓国の女性は髪の毛がとても綺麗でしょう?先祖代々海藻をたくさん摂っているからみんな年を重ねても白髪になりにくいのです。韓国では、味噌汁でもなんでも器からはみ出るくらいにわかめが入っています。スープを飲んでいるのではなく、わかめを食べているのかと思うくらい(笑)。一言でわかめスープと言っても、韓国ではわかめをベースに日替わりで一緒に入れる具材を変えます。じゃが芋の日もあれば、牛肉や鶏肉、白身魚、えごま、豆腐など、自分で自由にアレンジしていいのです。風邪気味のときや血をたくさんつくりたい時には良質の牛肉を入れると甘みが出るし、ヘルシーにしたい時には野菜を入れたり、何と合わせるかによって味わいが変わるのです。一般的にわかめスープには出汁を使わず、わかめと刻んだにんにく、塩、胡麻油だけで作ります。韓国はブイヨンを入れる文化がないので、どうしても出汁が欲しい時には、いりこや椎茸、干し鱈を出汁にしたりしてもいいですね。

──食にまつわることで、小雪さんが大切にしていることがあれば教えていただけますか?

韓国には海藻の種類も豊富にあるのですが、日本でもわかめ以外に、昆布やあおさ、海苔、藻草などをよく摂るようにしています。今回、娘を韓国で出産しましたが海藻ばかり食べていたせいか、まったく便秘になりませんでした。韓国では、出産後に便秘になるという症状が存在しないのだそうです。それだけ海藻が日常的に食されているということなのだと思いますが、今回改めて海藻の威力を体感しました。健康に対する国民の意識レベルもとても高い。
健康に良いものだけを食べようとするよりも、何でもいいから自分のために手づくりすることを心がけていけばいいのでは、と思っています。そうすれば、欧米化してしまった日本の食に対する意識も変わっていくと思うのです。

──食への興味が広がったのはいつ頃からですか?

小さい頃から母が家族の健康を気遣ってくれたおかげで、主食は玄米、白砂糖より黒砂糖、おやつはお菓子の代わりに干物と、素材本来の味がわかる料理や食の大切さや知恵を教わってきました。食に関する好奇心が幼い頃からとても強かったわたしは、母の料理をよく手伝ったりもしていました。
韓国では一般的な「産後調理院」での療養生活を体験するために、2人目のこどもをソウルで出産しました。栄養面を考えられた食事や手厚い手当てが充実していて、日替わりでいろいろな料理を食べることができます。たとえばいろいろな種類の葉っぱも味つけを変えるだけで、こんなにバリエーションが広がるのだということも勉強になったし、野菜をたくさん食べる食文化に一層興味が広がりました。そんな韓国料理の素晴らしさに目覚めてからは、アジアの食材を意識的に日常の料理に取り入れています。韓国には日本では手に入らない食材もたくさんあって、発酵している食品や発芽している食材を頻繁に食べるんですね。たとえば「セッサビビンバ」といういろいろなスプラウト(穀類、豆類、野菜の種子を発芽させた新芽)とコチュジャンを合わせたビビンバがあって、温泉卵と海苔をかけたりして食べるのですが、言わば春の新芽を食べているのと同じことですから、エネルギーに満ちた食べものをヘルシーに摂ることができるわけです。

──「産後調理院」での療養は、具体的にどのようなものだったのかお聞かせいただけませんか?

具体的には常駐しているドクターが毎日部屋まで診察にやってくるし、1日に1度おっぱいの先生もいらっしゃいます。ですから母体の疲労や乳腺炎などへの対応も迅速ですし、疲れが溜まったらアロママッサージを受けられる設備などもあります。妊婦2人に対して助産師が1人の割合で対応してくれるので、自分のこどもがどこで何をしているのかがよくわかるシステムになっています。母親の疲労がピークに達していたら授乳を休ませてくれるし、「産後100日は母親を休ませる」という観念はしっかりと定着していると思いました。わたしの場合は3週間の滞在でしたが、長男を出産した時よりも身体の回復がずっと早かったです。
こどもを産むということは人生において大きなイベントのひとつだと思うけれど、女性は普段から家事や仕事をしているわけで、出産も人生の一部ではあるけれど、それだけをやっているわけにはいかない。だから知識を得るに越したことはないし、何よりわたし自身が勉強をすべきだと思いました。幸いタイミングもちょうどよかったので、実験的に韓国での出産を敢行してみましたが、とても勉強になりました。
韓国の柔軟性の根底に流れているのは、国民性としての「おおらかさ」という気質が挙げられると思います。その懐の深さで安心する部分もたくさんありました。裏を返せば大雑把とも言えるので、出産はデリケートな問題ですから、真面目な日本人からすると「ここはちゃんとやってほしいな」と思う部分もありましたけど(笑)。「また韓国で出産したいと思いますか?」と聞かれたら、今回で充分だなと思いますが、身をもって経験したことで「身体を調理されている」ことを実感することができたことは大きな財産になったと思います。実際に出産や育児に関して、日本では教えてもらえるところが少なくなっていますよね。両親も遠くに住んでいて核家族化しているから、産後の気絶しそうに大変な時期を両親に手伝ってもらえるとしてもひと月程度。その後は、日々いろいろなことが起きるし、最もプロフェッショナルな助けが必要な時に、その経験だけは自分ひとりで培っていかなければならず、こどもを産んだ途端に寝不足も重なりながら、母親はロボットのようにミルクを出し続けなければならない。それを一から手取り足取り教えてくれるプロフェッショナルなひとが、側にいるのといないのとでは大きく違うと思いました。それは食事の面でも信頼の面においても言えることです。

──ひとりの女性としては、女優というご職業をお持ちの小雪さんにとって、お子さんたちのご出産を経て、ご自身のなかで変化はありましたか?

どういう風に変わったかと言えば、時間が普通に流れただけなのかもしれませんけど、実際にこどもを産んだことで、端で見て「ああ、大変そうだな」って思うことと、実体験として「大変だな」と思うこととは、やはり違うと思います。街を歩いていて、お母さんたちを見る目線も変わったし、このことは女優として役柄を演じるうえで役に立つとも思います。ただ、仕事は人生におけるエッセンスのひとつにすぎなくて、仕事とプライベートと子育てのうち、どれが一番大切ということでもないのです。女性が母親だけである必要もないし、仕事だけを頑張るというのも、わたしの中では少し違う気がしています。いろいろなことを経験しながら、人間として真面目に生きていれば、こどもはちゃんと見ていてくれる。長い時間を一緒に過ごすことだけが優先されることなく、ひとりの人間としてどのように生きていきたいのかにきちんと向き合い、影響を与え、与えられながら家族がひとつのチームみたいになっていければいいなと思っています。個人的には、母親だけになろうとすることでどうしても視野が狭くなってしまうこともあるし、ひとりの人間としての成長をストップさせることになってしまうのではないかと思う部分もあります。こどもができたから他のことをすべて諦めるのではなく、もっと楽に考えて、こどもが大きくなって、いろいろな経験をしている自分として普通に話ができる自分でありたいなと思うのです。ですから、今後も自分の心に触れることはどんどんやっていきたいと思うし、新しいことで興味があることを発信していきたいと思います。

──最後に、SSTに向けて、またSSTにご来店のお客さまに向けてメッセージをいただけますか?

SSTは女性たちにとってとても助けになっていると思います。これだけ具材が入っているスープにはなかなか出会えないし、得した気分になりますよね。外でスープを買って食べようと思った時に、これだけ家庭的な要素を取り入れたものは他にないと思うのです。スープをひとつ買って、家でおかずだけ一品作ってもいいし。以前、ギフトでSSTの冷凍スープをいただいたことがあるのですが、忙しい時にはサンドウィッチだけ作って、スープをひとりひとつ選んで食べられるようにしたら、とても助かりました。普段のスープ作りのアイディアにもなりますよね。
これからの時代、自分でしっかりと勉強をして知識を得ることはとても大切なことだと思います。これだけ情報が多い世の中において、自分自身で選び取っていく目をもつことが必要です。しっかりと目を開いて、自分で確かめて、それが自分に必要なのかどうかを見極めることができる目をもち続けられる人間でありたいですね。

小雪/こゆき

1976年神奈川県生まれ。モデルとして活動する中、98年にフジテレビ系ドラマ「恋はあせらず」で女優デビュー。映画初出演は00年、堤幸彦監督の「ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer」。03年にはトム・クルーズ主演のハリウッド映画「ラスト・サムライ」で世界的女優へ。04年に、蜷川幸雄監督の「嗤う伊右衛門」で日刊スポーツ映画大賞主演女優賞や、日本映画テレビプロデューサー協会が選定するエランドール賞新人賞、第12回橋田賞橋田新人賞を獲得。06年には「ALWAYS 三丁目の夕日」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した。その他主な出演作として「ラスト・ブラッド」(09)「カムイ外伝」(09)「わたし出すわ」(09)「信さん」(10)「探偵はBARにいる」(11)「ALWAYS三丁目の夕日'64」(12)など、数々のドラマや映画、舞台、CMなどで活躍。また著書「生きていく力」(小学館)が発売中。

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