Soup Friends
Soup Friends Vol.36 / 小雪さん
──Soup Stock Tokyo(以下、SST)をご利用いただいたことはありますか?また、お好きなスープがあれば教えてください。
──スープ(汁物)にまつわる思い出があれば、ぜひ教えてください。
──スープ(汁物)がお好きということでしたが、ご自身でお作りになるスープがあれば教えてください。
韓国チゲも作りますが、なかでも「チョンゴクチャン(納豆チゲ)」をよく作ります。韓国の納豆は日本のものと比べてもう少し発酵が進んでいて、豆の味が濃いのが特徴です。韓国ではチョンゴクチャン用の納豆なども売っています。もちろん日本の納豆でも作ることができますが、少しさらっとした仕上がりになりますね。
最近はとりわけ、わかめスープを飲むようにしています。おっぱいもよく出るし、甘くて美味しいみたいで、長男の時より長女のほうが母乳を好んでよく飲みます。試しに自分でも飲んでみたのですが、さらさらとしたコンデンスミルクみたいでした。昔は日本も海藻をよく摂っていたと思うのですが、韓国は海藻の消費量がとても多い国なので、現代の日本人や特に女性にとっては、見直されるべき食材のひとつだと思います。韓国の女性は髪の毛がとても綺麗でしょう?先祖代々海藻をたくさん摂っているからみんな年を重ねても白髪になりにくいのです。韓国では、味噌汁でもなんでも器からはみ出るくらいにわかめが入っています。スープを飲んでいるのではなく、わかめを食べているのかと思うくらい(笑)。一言でわかめスープと言っても、韓国ではわかめをベースに日替わりで一緒に入れる具材を変えます。じゃが芋の日もあれば、牛肉や鶏肉、白身魚、えごま、豆腐など、自分で自由にアレンジしていいのです。風邪気味のときや血をたくさんつくりたい時には良質の牛肉を入れると甘みが出るし、ヘルシーにしたい時には野菜を入れたり、何と合わせるかによって味わいが変わるのです。一般的にわかめスープには出汁を使わず、わかめと刻んだにんにく、塩、胡麻油だけで作ります。韓国はブイヨンを入れる文化がないので、どうしても出汁が欲しい時には、いりこや椎茸、干し鱈を出汁にしたりしてもいいですね。
──食にまつわることで、小雪さんが大切にしていることがあれば教えていただけますか?
健康に良いものだけを食べようとするよりも、何でもいいから自分のために手づくりすることを心がけていけばいいのでは、と思っています。そうすれば、欧米化してしまった日本の食に対する意識も変わっていくと思うのです。
──食への興味が広がったのはいつ頃からですか?
韓国では一般的な「産後調理院」での療養生活を体験するために、2人目のこどもをソウルで出産しました。栄養面を考えられた食事や手厚い手当てが充実していて、日替わりでいろいろな料理を食べることができます。たとえばいろいろな種類の葉っぱも味つけを変えるだけで、こんなにバリエーションが広がるのだということも勉強になったし、野菜をたくさん食べる食文化に一層興味が広がりました。そんな韓国料理の素晴らしさに目覚めてからは、アジアの食材を意識的に日常の料理に取り入れています。韓国には日本では手に入らない食材もたくさんあって、発酵している食品や発芽している食材を頻繁に食べるんですね。たとえば「セッサビビンバ」といういろいろなスプラウト(穀類、豆類、野菜の種子を発芽させた新芽)とコチュジャンを合わせたビビンバがあって、温泉卵と海苔をかけたりして食べるのですが、言わば春の新芽を食べているのと同じことですから、エネルギーに満ちた食べものをヘルシーに摂ることができるわけです。
──「産後調理院」での療養は、具体的にどのようなものだったのかお聞かせいただけませんか?
こどもを産むということは人生において大きなイベントのひとつだと思うけれど、女性は普段から家事や仕事をしているわけで、出産も人生の一部ではあるけれど、それだけをやっているわけにはいかない。だから知識を得るに越したことはないし、何よりわたし自身が勉強をすべきだと思いました。幸いタイミングもちょうどよかったので、実験的に韓国での出産を敢行してみましたが、とても勉強になりました。
韓国の柔軟性の根底に流れているのは、国民性としての「おおらかさ」という気質が挙げられると思います。その懐の深さで安心する部分もたくさんありました。裏を返せば大雑把とも言えるので、出産はデリケートな問題ですから、真面目な日本人からすると「ここはちゃんとやってほしいな」と思う部分もありましたけど(笑)。「また韓国で出産したいと思いますか?」と聞かれたら、今回で充分だなと思いますが、身をもって経験したことで「身体を調理されている」ことを実感することができたことは大きな財産になったと思います。実際に出産や育児に関して、日本では教えてもらえるところが少なくなっていますよね。両親も遠くに住んでいて核家族化しているから、産後の気絶しそうに大変な時期を両親に手伝ってもらえるとしてもひと月程度。その後は、日々いろいろなことが起きるし、最もプロフェッショナルな助けが必要な時に、その経験だけは自分ひとりで培っていかなければならず、こどもを産んだ途端に寝不足も重なりながら、母親はロボットのようにミルクを出し続けなければならない。それを一から手取り足取り教えてくれるプロフェッショナルなひとが、側にいるのといないのとでは大きく違うと思いました。それは食事の面でも信頼の面においても言えることです。
──ひとりの女性としては、女優というご職業をお持ちの小雪さんにとって、お子さんたちのご出産を経て、ご自身のなかで変化はありましたか?
──最後に、SSTに向けて、またSSTにご来店のお客さまに向けてメッセージをいただけますか?
これからの時代、自分でしっかりと勉強をして知識を得ることはとても大切なことだと思います。これだけ情報が多い世の中において、自分自身で選び取っていく目をもつことが必要です。しっかりと目を開いて、自分で確かめて、それが自分に必要なのかどうかを見極めることができる目をもち続けられる人間でありたいですね。