Soup Friends
Soup Friends vol.98/岡野 道子さん
大学院修了後は伊東豊雄建築設計事務所に所属して、劇場や美術館、オフィス、こども園の設計や、被災地でのまちづくりに携わりました。建築の設計は、用途以外のことを想像することも大切。劇場であれば、上演していない時はどう見えるか。演劇やオペラを観に行く時の高揚感を盛り上げるには、劇場までの動線はどうなっているのが効果的かも考えます。
私が教えている大学では、建築学部の中に“プロジェクトデザイン研究室”があり、学生は社会や被災地の問題を建築的なアイデアで解決することを学びます。いろいろな場所に出かけて建築だけでは解決できないことも考えるのですが、例えば、漁村で海底の地層を研究する先生の話を聞いたりします。学生の時から生物が好きなので、私も楽しいですね(笑)。
「100本のスプーン あざみ野ガーデンズ」で進行中の、子どもたちと一緒に実際に公園をつくるプロジェクトでは、参加者の “ コドモ建築家”の言葉に毎回驚かされます。「滑り台は登った時にこんな風景が見えて、滑り終えたらふわふわの草があって、そこにパフってなるんだ!」というように、子どもたちは想像したことを物語のように語るのが上手。大人は外側から説明しがちだけど、自分の視点を他人に伝えることの大切さを、改めて実感しています。
私が心を動かされるのは、教会や古代ローマのパンテオンのような光の入り方が美しい建築。以前、携わった劇場「座・高円寺」がまさにそんな建築で、黒いテントのような外観だけど、壁にたくさんの穴が空いていて、そこから自然光が差し込んで、中に入ると点の光のグラデーションを感じることができます。自然との接点、外と中の中間地点を設計するのは、興味深いですね。そこに人の居心地のよさをうまく融合させる、ということをいつも考えています。
出張が多いので、移動中の飛行機や新幹線で頭の中を整理することも多いです。周りに人がいても、一人の世界に入れる狭い空間はいいですよね。疲れたら、ぼんやり窓の外を眺めたり。でもやっぱり自分のペースを取り戻すには、事務所のデスクに座るのがいちばんです。本を読んだり、仕事を冷静に見直すことができるので。休日は自宅の近くにある緑道を散歩する時間を大切にしています。緑道は半公共的で家の持ち物のようにも見えるし、緑道自体が庭と公園の間という感じがして大好き。散歩中につい、建物の足元をチェックしちゃうこともありますけど(笑)。