2018/8/25(Sun)@東京・中目黒
Soup Stock Tokyo の商品開発には「旅からうまれるスープ」という切り口があります。
旅からうまれる、とひとことで言ってもその表現方法は様々。
旅で出会った現地の味に感動し、帰国後に舌の記憶を頼りに再現したスープ(たとえば、タイの「トムカーガイ」)。
食文化や食材の組み合わせにインスピレーションを受けて作ったスープ(たとえば、ソーセージ作りからうまれた「豚肉と緑レンズ豆のオーベルニュ風煮込みスープ」)など、たくさんのスープを作ってきました。
旅先で出会うあたたかな人々や、彼らと囲んだ料理を「誰かに食べさせたい」という思い、旅ではじめて口にした味や驚きの食材など新しい発見は、Soup Stock Tokyo のレシピ作りのエッセンスの一つになっています。
今回みなさまと一緒に旅をするのは、ヨーロッパの最西端、最果ての国ポルトガル。
九州と四国を合わせたほどの大きさの国土に、東京都の人口よりもやや多い約1,000万人が暮らしています。
街並みや食文化など様々なところに大航海時代の繁栄の面影を残すポルトガルは、イタリアやフランスなどのヨーロッパ諸国とは異なる、どこか独特の空気を持っています。
商品開発の桑折は、そんなユーラシア大陸の果ての国ポルトガルにいつからか強く惹かれ、今年の春に初めて現地を訪れました。
旅の様子は、NHK「世界はほしいモノにあふれてる」にて7月にオンエアしていただきました。
番組で取り上げられたシーンのほかにも、たくさんの「おいしい」や人々との出会いがあり、それを皆さんにもお伝えしたいと考えて今回のおいしい教室を開催しました。
今回は、東京・富ヶ谷のポルトガル料理&ワインバー「Cristiano's(クリスチアノ)」の店主、佐藤幸二さんをゲストとしてお迎えし、ポルトガルの旅の裏話や食の話、旅先での”おいしい”との出会い方など、たっぷりとお話を伺いました。
■ 第一部:トークセッション|ポルトガルの旅と食と文化を語る。
TV番組密着の裏話も…。
第一部では佐藤さんと、Soup Stock Tokyoの開発担当の桑折がトークセッションを行いました。
桑折
昔は食材の運搬が大変だったので、お肉や海産物は運んでいるうちにどんどん鮮度が落ちてくるんですよね。
でも、できるだけおいしいものを食べたいという気持ちはいつの時代も一緒。
そこで、赤パプリカとニンニクと塩でつくったソースで豚肉をマリネして鮮度がなるべく落ちないようにしていたそう。その料理が“カルネ・デ・ポルコ・ア・アレンテジャーナ”です。
桑折
宗教を調べるために、豚肉料理をお客様に出して食べるかどうかを見るという方法もあったそうで、“カルネ・デ・ポルコ・ア・アレンテジャーナ”はそうやってどんどん広がっていきました。料理の背景には必ず歴史があるんですよね。
佐藤さん
ポルトガルのソウルフードといえばタラを塩漬けして干した “バカリャウ”です。
旨味がぎゅっと凝縮されているので、茹でてソースをかけたり、ほぐしてスープに入れたり、サラダに和えて食べることもあります。
乾燥しているのでお水で戻して料理に使うのですが、ポルトガルの良いお嫁さんはバカリャウを戻すのがうまいと言われることもありますね。
なぜ、その料理が広がっていったのか、どうして生まれたのかの背景や風習を知ることで、料理や旅の愉しみ方も変わってきそうです。
佐藤さん手作りのバカリャウ。
国内ではポルトガル料理の食材や調味料を手に入れることが難しいため、佐藤さんはあらゆるものを手作りします。
桑折
ポルトガルを旅行した日本人の70%がリピーターになるそうです。
お料理の味が合うということもありますが、ポルトガルはヨーロッパで唯一時間が止まったような国なんですよね。
“アレンテージョ時間”なんて言葉がありますが、何事も焦らず、ゆっくり、ゆっくり。
現地で料理を教えてもらう時にも、何度も言われました(笑)。
佐藤さん
そうなんですよね。それと、はじめてポルトガルを訪れた時は気を付けてほしいのですが、レストランで代表的な料理は毎日は提供していないんです。
火曜は”バカリャウ・ア・ブラス(バカリャウと千切りフライドポテトの卵とじ)”、水曜は”ポトフ”、といった感じです。
他の日に行っても、今日はやっていないよと言われますね(笑)。でもその商売っ気の無さが、妙に心地よかったりします。
ポルトガルで出会った美しい風景や出会った人々の記憶から、「どんな基準で、旅先のレストランを選んでいますか?」など旅を愉しむ方法まで、話題はどんどん広がります。
途中、NHK番組の密着の裏話が飛び出し、一同笑いに包まれる場面も。
■ 第二部:デモンストレーション|佐藤さんが恋したポルトガルの定番料理“バカリャウ・ア・ブラス”
第二部は、佐藤さんがポルトガル料理店をはじめるきっかけにもなった料理“バカリャウ・ア・ブラス” (バカリャウと千切りフライドポテトの卵とじ)を会場の中心で調理していただきます。
佐藤さん手作りのバカリャウをつかって、さあ、調理スタート。
佐藤さん
ポルトガルでは、365日違うレシピでバカリャウを食べるんですよ。
桑折
パクチーを使う料理が多いというのもかなり意外でしたね。
佐藤さん
ポルトガルとパクチーってあまりイメージがないですよね。ポルトガルの南の地方は、パクチーを料理に多用するんです。”バカリャウ・ア・ブラス”でもパクチーが味のインパクトになっています。
料理のデモンストレーションとともに、さらに佐藤さんと桑折のトークが盛り上がります。
■ 第三部:立食懇親会|ポルトガル料理とワインを愉しむ、“おいしい時間”
第三部は、参加者のみなさまと立食懇親会。
桑折がポルトガルの旅で現地で買ってきたカラフルでちょっとレトロなテーブルクロスの上に、さきほど調理した“バカリャウ・ア・ブラス”などのポルトガル料理やデザートがずらりと並びます。
料理のお供は、佐藤さんにお持ちいただいたポルトガルワイン。
ワイン片手に、参加者のみなさま同士の会話も弾みます。
NHKの番組内で桑折がつくった、旅から生まれたスープ“干し鱈とひよこ豆のスープ”も登場。
佐藤さんと桑折、参加者のみなさまとともに、ポルトガルをたっぷり味わった約2時間半となりました。
「おいしい」を紐解くと、そこにはさまざまな要素が関わっています。
旅先で出会った人や美しい風景。そして食の背景にある歴史や文化。それらを知ることで、より一層想像力が掻き立てられ、さらに「おいしい」を感じるのかもしれません。
次の旅先はどこにしよう?おいしい教室の後は、旅の妄想が膨らみます。
次回のおいしい教室も、どうぞお楽しみに。