2019/2/17(sat)@東京
昨年の9月から始まった、おいしい教室「食からはじまる 暮らしの見立て方」もあっという間に最終回です。
最終回はいつもの自由が丘also Soup Stock Tokyoではなく、川上さんのアトリエでの開催。
川上さんのこだわりがつまったアトリエにて、特別なひと時になりました。
■ 漬物は、育てる料理。
冷蔵庫にあると嬉しい色々な漬物。炊き立てのご飯と、お漬物だけあればごちそうです。
川上さんは普段作り置きはしないそうですが、お漬物だけは、明日、明後日、未来への自分への投資として冷蔵庫に必ず準備しているそう。
お漬物の味は各家庭ごとに違います。その家の環境や、人の手にある乳酸菌などの何万もの菌によって、さまざまな味に育っていきます。
お漬物は料理の中でも珍しく、【育つ】料理です。
漬ければつけるほど、旨味、深味が増し、さまざまな季節の味わいを楽しむことができます。
漬け床、汁で代表的なのは
・ぬか
・醤油
・味噌
・砂糖
の4つ。粕や麹も近年注目されていますね。
漬ける食材は
・野菜
・肉
・魚介
・果物
季節によってさまざまな食材を楽しめます。
それに加え、漬け床×食材と加えるアクセント(スパイス、ハーブなど)で可能性は無限に広がっていきます。
お漬物は塩分が気になる…という方も多いですが、それ以上に乳酸菌による整腸作用や、野菜の摂取のほうが注目されています。ただし、市販のものには添加物(保存料・着色料など)が含まれているものが多いため、きちんと表示を確認するか、手作りするのが一番。
今回は川上さんの沢山のレパートリーの中から、おすすめのお漬物をいくつか教えていただきました。
どのお漬物も、漬け床の味で決まるので、漬け床を作った時点で味を確認するのがポイントです。
風味や旨味を足したい場合は醤油や味噌。素材の味を引き立たせたいときは塩で調節するのがおすすめです。
◆ 塩漬け・醤油漬け
えごまの醤油漬け 漬け時間は30分ほどでよく、2週間ほど日持ちします。
にんにく+醤油+えごま。この3つだけで完成。お好みで辛みを加えてもおいしく仕上がります。
ご飯との相性は言うまでもなく抜群。おにぎりにするのもおすすめです。
塩漬けの代表は梅干し。川上さんは毎年の梅仕事を楽しみにしているそうです。大きくふっくらした梅干しは日本の食卓の定番です。
◆ ぬか漬け
難しいというイメージで敬遠されがちですが、一度準備したらいつでも使える万能選手です。味の決め手はおいしいぬかを使うこと。発酵不足だと旨味が少ない場合があるため注意しましょう。
焙煎したいりぬか+塩+α(こんぶ・にぼし・みかんの皮)+野菜。基本はこの4つです。
なまぬかだと、ごく稀に虫がついていることがあるので注意しましょう。
ぬか床が活発に発酵するのは春~夏。夏は2~3時間、冬は5~6時間で食べごろになります。
ぬか床は毎日混ぜないといけない、というイメージがありますが、しばらく混ぜられないときは空気を抜いて、冷蔵庫(3日に1回ほど混ぜればOK)もしくは冷凍庫(1か月ほど保管)で保管して、ぬかの発酵をゆるやかにするとよいそう。
もし発酵しすぎたら、粉辛子やいりぬかを足しましょう。
川上さんから少しづつぬか床を分けてもらいました。ここからまた、それぞれのお漬物が育っていきます。どんな味になるか楽しみです。
◆ キムチ
韓国の漬物の代表、キムチ。日本の漬物と違い、韓国の漬物には動物性のだしを多く使うことが特徴です。
今回は、煮干し+サバ節でだしをとり、さらにアミの塩辛を加えました。アミの塩辛の代わりにアンチョビやナンプラーを加えるのもおすすめです。
だし+はちみつ・にんにく・生姜・唐辛子を加えて、ベースを作ります。唐辛子は一味でも可能ですが、できればキムチ用の中挽きがおすすめです。
このベースをもとに、大根にひと塩。しなっとしたところに和えればカクテキ。たたいたキュウリとゴマと和えればオイキムチ。冷奴などに添えても良いですね。
他にも卵のピクルス、チーズの味噌漬け、白身魚の粕漬け、大根のハリハリ漬けなどたくさんのお漬物はまさにご馳走です。炊き立ての土鍋ご飯と、粕汁と一緒に「おいしい教室」最後の食卓を囲みました。
炊き立てのごはんのおいしさは言わずもがな、一つひとつの漬物の味の深味、旨味に全員からため息のような歓声が。
見た目は地味かもしれない、質素かもしれない。だけれど、ひとつひとつの食材に合わせて手間暇をかけたお漬物は、まぎれもないご馳走でした。
一口、一口かみしめるたびに旨味があふれ、幸せだなとふと思えるような料理は、お漬物以外にあるのでしょうか。みんなで思い思いにおかわりし、おいしく頂きました。
全6回にわたり開催した「食からはじまる 暮らしの見立て方」
人の暮らしを支える中心にはいつも「食」があります。
季節を楽しみながら、大切な人と、楽しく、おいしいものを食べること。それは暮らしや人生を豊かにします。食卓を彩るために花を飾ったり、日々のお弁当に小さなあしらいを加えたり、身近な飲み物を見直したり。特別なことはありません。
当たり前だけれど忘れがちで、大切にしたいこと。この教室を通じてそんな思いが伝わっていれば幸いです。
おいしい教室が、みなさまの暮らしを少しでも豊かにするヒントになりますように。
また、ぜひお会いしましょう。
ゲストプロフィール:川上ミホさん