2022年10月、昨年に続きSoup Stock Tokyo外食店舗(※一部店舗を除く)にて、未利用魚を使った「長崎県五島産すり身団子のスープカレー」が登場します。未利用魚とは、サイズが規格外、匂いが強く加工しづらい、一般に知られていないことで買い手がいないといった理由で市場にあまり出ない魚のこと。”どんな食材も、おいしく食べる工夫をすることが未来のおいしいにつながる”、その想いからこのスープは誕生しました。
スープに使用する未利用魚は、長崎県五島で獲れたもの。ひとえに「未利用魚」といっても獲れる魚はその年によって違うため、今年のすり身は昨年とは一部違う魚を使用しています。

未利用魚

 


2022年、「長崎県五島産すり身団子のスープカレー」に使用しているすり身団子に含まれる未利用魚の割合は、未利用魚はニザダイ6割程度、その他イスズミやシイラを配合しています。魚の組み合わせで味や食感が変わるので、そのバランスを調整するのが難しいですが、おいしいすり身づくりのために毎年必要な作業です。すり身を作っていただく浜口水産さんにも何度も相談しながらレシピを完成させました。


スープに未利用魚を使うと言っても、実は簡単なことではありません。未利用魚の中には磯の海藻を食べてそれが魚の胃の中で発酵し独特の臭いがあるものもあり、適切に調理をしないと食べにくさを感じてしまうこともあります。そこで、Soup Stock Tokyoの料理人が試行錯誤を重ねて誕生したのが、「長崎県五島産すり身団子のスープカレー」。店舗にてすり身を団子にし調理することで、素材となるニザダイ(未利用魚の一つ)などのだしがスープに染み出し、スープの旨味となります。

未利用魚
▲右)「長崎県五島産すり身団子のスープカレー」に使用するすり身を作っていただく浜口水産 濱口貴幸さん

今回、未利用魚のすり身を作っていただいた浜口水産さんが、五島での未利用魚を使用した商品づくりついて、お話してくださいました。

「五島の海は、昔から自分の日常に存在するものでした。だからこそ、磯焼け(※)が進んでいる今の海の状況を見ると、どうにかしなければと思いますし、これからの未来につなげるためにも海を守っていくために、今自分ができることを実施しています。

例えば、未利用魚と呼ばれる魚をわたしたちが買うこと。未利用魚が市場に流通するようになれば、磯焼けが進む要因を少しでも減らせますし、使われないで捨てられてしまう魚を減らすことができます。どんな魚もおいしく食べるための工夫をして、それが結果的に海を守ることにつながればいいなと思います」

※磯焼け…海藻が繁茂し藻場を形成している沿岸海域で、海藻が著しく減少・消失し、海藻が繁茂しなくなる現象。

スープ専門店を営む私たちにできることは何か。これまでなかなか価値を見出されずに廃棄されてきた「未利用魚」の中には、調理の工夫でおいしく食べることができるものがあります。さんまや桜海老の不漁の状況を目の当たりにし残念に思うだけではなく、違うところに目を向けたり視点を変えることで、今回の未利用魚の活用のように新たな食材としての可能性を見出すことにつながるのではと思っています。


長崎県五島列島の魚をすり身にし、ふんわり仕上げた団子が主役のスープカレーをつくりました。うずらの卵や揚げなす、ヤングコーンなど、ごろっとした具材が食べ応え抜群です。一口大にカットしたキャベツや蓮根の食感もお楽しみいただけます。スパイスが魚の旨味を引き立てて、あっさりしながらもコクのある味わいに仕上げました。