秋の果物といえば「梨」。店頭に並び始めると季節の移ろいを感じます。
「梨の一大生産地である千葉県市川市で流通せずに破棄されてしまう規格外の梨がある。」そんなお話から、2021年、Soup Stock Tokyoと市川市の梨農家さんとの取り組みを始めました。果皮の傷や芯の傷みを取り除くのは大変だけれど、手間隙をかけて調理をしたらまだまだおいしく食べられる梨があることを知り、完成した商品は「梨のラッサム」。南インドのスパイシーなトマトスープと市川市の梨の出会いが、ユニークなレシピを生み出しました。


そして今年もその取り組みを進めていた矢先、ある一報が入りました。


「6月に降ったひょうの影響で、市川市の梨に大きな被害が発生したらしい。傷がついてしまい、流通させることができない梨が大量に出てしまうかもしれない」

何かご協力できることはないだろうか?そんな想いで、JAいちかわへ。センター長の武藤さんにお話を伺いました。

ーーひょうの被害がかなり深刻とのこと。

武藤さん:はい。6月3日に市川市を中心にひょうが降りました。ほんの数分の出来事だったのですが、まだ成長する前の状態で多くの梨に傷がついてしまい、ついこの間までこの先どうなるかわからないような状況でした。

ーーどのくらいの被害だったのでしょうか?

武藤さん:落ちてしまったものも多く、収穫できる全体の6-7割の梨に傷がついてしまいました。

ー ―そうだったのですね。傷がついてしまった梨は今どのような状況なのでしょうか?

武藤さん:傷がついてしまった部分は成長するとコルク状になるものと、傷が深く腐ってしまうものがあります。コルク状のものはいわゆる”かさぶた”。梨の中身や味には問題はありません。

ーー中身や味に問題がないコルク状に傷がついてしまった梨は廃棄されてしまうのでしょうか?

武藤さん:いえ、今回は規格外品を市場に出回らせるために「ひょう」という規格を新しくつくりました。ひょう被害品であっても味はおいしい梨なので、正規品として少し価格を下げて流通させるのです。


ーー「ひょう」規格の梨は千葉県内で販売しているのですか?

武藤さん:オンラインショップを中心に販売しています。ひょう被害を受けた梨はめったにない機会に「当たった」ということで、「あた梨(り)ちゃん」と、幸い転じて福となすように名前をつけました。
▶︎JA市川オンラインショップはこちら

ーー「あた梨ちゃん」、縁起が良くておいしそうな名前ですね。今年の梨の味はいかがでしょうか。

武藤さん:暑い日が多く、日照時間も十分にあったので例年よりも甘く仕上がりました。ひょう害が出てしまい残念ですが、それによって生まれたあた梨ちゃんは立派なおいしい梨です。ぜひ、多くの方に召し上がっていただきたいです。

千葉県市川市で生まれた「あた梨ちゃん」はひょうの被害を受けても立派でおいしい梨。そんな梨をたくさんの人に届けたいという強い前向きな気持ちが、新たな規格や名前を生み出したことを知りました。
今が旬の梨、どうぞおいしくお召し上がりください。


Soup Stock Tokyoでは今年も「梨のラッサム」を販売します。梨のおいしさだけではなく、産地の今も知っていただけたらうれしいです。

「梨のラッサム」
梨を生のままカットし、酸味と辛味が特徴のトマトスープ「ラッサム」の具材として合わせました。スパイスの香りと酸味、辛味の中に、梨の甘みとみずみずしい食感をお楽しみいただける、この時期ならではのスープです。